ただ、誠司さんのアパートがこれだけのゴミ屋敷だとは考えにくい。
もっと簡素で、物が少ないイメージ。それが一人暮らしの男の部屋ではないだろうか。
少なくとも、私は一人暮らしの男の描写を書くときは、そういう部屋を書いた。誠司さんにもそれを見せてOKをもらったこともある。
もし誠司さんがここに住んでいるなら、あの時、私の原稿を思いっきりばら撒いて、
「バッキャロー! 一人暮らしの男の部屋ってのはなあ、納豆に卵を混ぜて放置したような匂いがするもんなんだよ!」
と言うに決まってる。
なんでゴミを捨てないで溜めておくのだろうか。チップスターの筒はまだいいとして、弁当を食べた後の割り箸なんて取っておいて、何に使うのだろうか。これでイカダでも作って、川に浮かべるつもりなのだろうか。
その答えを訊こうにも、当人はグースカといびきをかいて寝ている。寝顔は可愛いのに、この状況と相成ってなくて、逆に奇っ怪に映る。



