「笹川さんはどうして海外文学をそこまで推すんですか?」
「推しているというか、単純に日本文学が嫌いなんだよ。どこか古臭くて、どてら姿の男ばかりが出てくるイメージだからね。」
「でもそれって、昔の、純文学ってジャンルの小説じゃないですか?」
「その純文学って言い方も気に入らない。純文学じゃない小説って一体何があるっていうんだい?」
「そりゃ、ライトノベルとか……ですかね。」
「そもそもラノベってなんだい? 挿絵がついてたらそれはラノベか? なら絵本はどうだ? あれもラノベか?」
笹川さんはどうやらお酒に弱いらしく、持論を偉そうに展開している。さすがの明美もこれには困惑気味で、私に助け舟を出すように目で訴えかけてくる。
誠司さんはというと、
「すいませーんっ! ハイボールトリプルってできますかー!」
とまあ、まだビール一杯しか飲んでないのに、すっかりと酔ってしまわれている。



