私と誠司さんはというと、読者アンケートの結果を待ちながら、結婚準備に追われていた。
式場をどこにするか、ウェディングドレスの試着、実家の長野に帰って母さんから「この着物、派手じゃないかしら?」口撃……。
私の稼いできたお金はあっという間に消えていった。
私たちは結婚する。その事実は変わらない。
しかし、それにはもう一つ、何とかしないといけない。というか、片付けておかないといけない問題があった。
ゴミ屋敷撤去問題だ。
お忘れかもしれないが、誠司さんのアパートは立派なゴミ屋敷だ。
洗濯槽にはケンタッキーの骨が捨ててある、まだ全然着れるカッターシャツの山、そして空き缶の周りをゴキブリが顔を出す……。
……本当はやりたくないんです。でも、業者に頼んでしまうと、スキャンダルものだから、それもできない。
ゴミは軽トラを借りて、藤原に捨てに行かせるとして、部屋の掃除は、私たちだけで片付けなければならない。
それも完全装備で。一体、何日かかることやら……。
ゴミ屋敷を前に、誠司さんと二人並んで立った。
「りん。覚悟はできてるか?」
「はい。でも、私、ゴキブリを見ると失神するんですけど……。」
「そんときは俺が担いで病院へ送ってやる。」
「それは大袈裟です。とにかく、ゴキブリが出たら、シューってやってくださいよ? 丸めた新聞紙でパンパンやってくださいよ?」
私たちは、マスク越しに深呼吸を一つ、それから意を決して、アパートの玄関を開けた。



