誠司さんが車を出している間、庭にある池の鯉に餌をやった。



縁側には母さんが座っていて、「あんた、誠司さんにあんまり迷惑かけるんじゃないよ?」とうちわで仰ぎながら言った。



「どっちかって言うと、私の方が迷惑かけられてるかな。」



「どういうことよ?」



「あの人ね、部屋が物凄く汚いし、洗濯機も一人で回せないし、靴紐もネクタイも結べないくらいダメ男なの。プロポーズの時なんて、酔っぱらって来たんだからね?」



「いいわねえ、そういう男の人。うちのお父さんそっくり。」



「そうなの?」



「そうよお。母さんもプロポーズされたとき、ベロンベロンに酔っぱらって、『お前と一緒になれなきゃ死んでやる!』ってあそこの桟橋で叫んだのよ? もう、近所の人から警察まで来て恥ずかしかったんだから。」



「やっぱり、お父さんと似た人と結婚するのが娘なのかな?」



「そうかもね。」