そして、9月19日から9月20日へ変わった深夜、原稿は完成した。



プリントアウトをし、それを誠司さんと並んで一ページ、一ページ、指でなぞりながら読んだ。



そして、最後の一行を読み終え、私は誠司さんと顔を合わせた。



「ど、どうでしょうか……。」



誠司さんは何も言わず、キッチンの方へと向かった。もしかしたらダメだったのかもしれないと思い、まあ、でもそれはそれで一生懸命やったのだから悔いはない。



そう思っていた。しかし、



「よく頑張った!」



そう言って、誠司さんはカウンターキッチンからシャンパンを掲げた。コルクの飛ぶ「ポンッ!」という音が、深夜の私の部屋に響き渡り、その音に驚き、それから膝を折って泣いてしまった。



「よがったでず……ほんどうに……よがっだでず……。」



こんなに感動したことはない。「エゴイスト」がベストセラーを達成したと聞いた時よりも100倍嬉しかった。



あの誠司さんに、「お前には恋愛小説は向いてない。」の一点張りだった誠司さんに、認められたことが本当に嬉しかったのだ。



「何泣いてんだ? ガラにもない。」



「だ、だっで……。」



思わず誠司さんに飛びついてしまった。シャンパンが少しこぼれたが、そんなこと、どうでもよかった。