「早期なんでしょ?」
「それがステージ4。末期らしいんです。抗がん剤で様子見るしかない状態で……。」
「そうだったの……。」
藤原のお母さんには会ったことはない。ただ、トイプードルを世話してもらっていることもあり、いつかお礼に行きたいとは思っていたのだ。
それなのに、こんな状態で犬を押し付けた私は……本当に馬鹿だ。
「先生。親孝行ってどこからどこまでが親孝行なんですかね。俺、わかんなくて……。」
言われてみればそうかもしれない。
親になったことはないから、子供に何をしてもらいたいかなんてわからない。
でも、それと同時に、親が何をしてもらって喜ぶかなんてこともわからない。
そう考えると、本当の親孝行って一体なんだろう。ちゃんと自立することなのか、離れずに介護をして暮らしてあげることなのか、温泉旅行をプレゼントすることなのか、孫を見せてやることなのか……。



