「いや、ほら、逆さ箸って、手で持つところじゃないですか? そこを食べ物で掴むっていうのは、ちょっと汚くないですか?」
なんてことを言う奴だろうと思った。軟骨のから揚げの乗った取り皿を勢いよくテーブルに置いてやった。
「ちょ、そんなに怒らなくてもいいじゃないですか!」
「うっさい、死ね!」
「そんなに『死ね』って言葉、多用しないでくださいよ。俺、新人の時に先生からそう言われて本気で落ち込んだんですからね?」
「そうだったかしら? あ、そういえばお母さん、大丈夫だったの?」
「死ね」というワードで藤原のお母さんが倒れた話を思い出すのもどうかと思ったが、気になっていたのだ。
「ええ。大丈夫には大丈夫だったんですが……。」
「何よ?」
「いえね、一応、検査してもらったら、ガンが見つかって……。」
思わず、持っていたジョッキを置いた。



