その夜、藤原を呑みに誘った。



本当は高級レストランで食事でもご馳走してやりたかったのだが、それだと逆に藤原が気を遣うと思い、いつもの大衆居酒屋にした。



「先生、本当にすみません……。」



「謝らなくていいって言ってんでしょ? 私の責任なんだから。」



「でも……僕はあれは絶対いけると思ったんですけどね……。」



「まあそれは私が一番思ってた。でも、純文学ファンから見れば、私の作品は稚拙過ぎたのよ。それで1年近くも連載できたんだから、大金星よ。」



私は藤原に軟骨のから揚げを取り分けてやった。



「先生、そういう時は直箸じゃないと……。」



「何? 逆さ箸だと嫌な訳?」



「いえ……先生がそれでいいならいいんですが……。」



「ですが何よ?」