わかっていたことだ。もう覚悟はできていた。



この今、藤原に渡した原稿だって、そんなに良いと思わない。むしろ、面白くなくて、消化試合のような気持ちで書いた。



だからすぐに原稿は出来上がる。適当に書いて、誤字脱字は編集部で直してもらえばいいくらいの気持ち。



どうしてこんなモチベーションになってしまったのか。きっとそれは、私がこの作品に対して飽きてきたからだと思う。



反応もない。アンケート結果も最悪。それなのに藤原も、パンジーの編集長も胡麻を擦るように低姿勢。だから、付けあがって、自分に才能がないことに気づけなかったんだ。



私の才能は、誠司さんに赤ペンで真っ赤に染められるほどの才能。小説家の卵くらいの才能しかないのだ。それを最近になってようやく気付いたのだ。



「あと2話です。どうしましょうか?」



この「どうしましょうか?」は、作品として完結させるか、話の流れそのままに書いて、途中で終わらせるかのどちらをとるかを意味している。



もちろん前者だ。作品は、私にとって息子、娘のようなもので、どんなに出来が悪くても、自立させてやるのが親の務めなのだ。



「完結させるわ。来月くらいにはできると思うから。」



「2話分、ですか?」



「その方が藤原も楽でしょ? 他の作家に付く時間が増えるじゃない。」



藤原は目に涙を浮かべていた。きっと責任を感じているんだと思う。アホらしい。純粋な奴だ。



悪いのは私なのに。