帰り道、車を運転しながら誠司さんは、クラシック音楽を流した。 聴いたことのある曲で、ラヴェルの「ボレロ」という曲らしく、彼女と別れたとき、ずっと聴いていた曲だそうだ。 「どうしてそんな曲を急に流したりなんかするんです?」 「まあ、なんだ。苦い思い出をいい思い出に変えたくてさ。」 夜景に照らされた誠司さんの顔は少し照れているように見えた。