何だかんだあって岡山駅に着くと、そこから在来線に乗り換え。
JR特急しおかぜという電車で、東京の地下鉄と違って、座席が新幹線のようにちゃんとある。座席をひっくり返して4人掛けにもできるタイプの電車で、乗客もそれほど多くなく、快適だった。
「これが普通の電車なんて、地方は恵まれてますね。」
「趣があるって言うのかな。自然と共存している姿だよな。」
窓外の景色は海。それも穏やかな瀬戸内海で、様々な小島が点々としていて、小さくて見えなかったけど、そこに住む人たちの暮らしが何となく想像できた。
日本もまだまだ捨てたもんじゃない。そりゃ地元の長野県も負けないくらいの田舎だけど、それとは違う、青い田舎。
気温も暖かい。乗客も病院の待合室のように、初対面であろう老人たちが和気あいあいとコミュニケーションをとっている。地下鉄では見られない光景。
地下鉄なんて、誰もがイヤホンをしているか、スマホをいじっているか、新聞や本を各々読んでいるかで、物静か。電車のガタンゴトンという音しか聞こえない。
売れたらこういう街に住みたいと思った。こういう街で仕事をしている人に嫁いで、親戚や近所の人からもらう野菜や魚を食べて暮らす。
そこに誠司さんは……欠伸を掻いている。よだれまで垂らしている。いらない。こんなダメ男。



