みどりの窓口にたどり着いた誠司さんは、駅員に、「岡山まで大人二枚、自由席。当日券ね。」と言った。こういう男の人、嫌い。
発券が終わると、その足でお土産コーナーに向かい、東京バナナを一箱買った。好きなのだろうか、東京バナナ。
「誠司さん。そろそろ教えてくれませんか? どうして岡山なんですか?」
「岡山じゃない。愛媛だ。」
愛媛? 愛媛ってあの愛媛か? なぜ愛媛?
「っていうか、自由席ですか? 私、グリーンの方がいいんですけど……。」
失言だったのか、誠司さんは鬼の形相で振り返った。
「はあ!? うぬぼれんな、三流作家!」
仮にも大ベストセラー作家を前に三流作家とは……言ってくれやがる。
「そういうのは直木賞でも獲ってから言え!」
「あ、お金のことですか? それなら私が出しますから、ね? 今からでもグリーンに変えませんか?」
「変えない。それに自由席だってシートはグリーンだ。」
いや。確かブルーだ。