そうではないことに気がついているのがもしも僕だけなら。


 僕だけは彼女に生き方を強制したくないと、そう思った。

 
 僕は言う。

 「ごめん」

 きっと僕の思っていた柚木も、強要されていた彼女なんだ。もしかしたら今こうして話している彼女も、僕が期待してしまっている柚木なのかもしれない。だったら改めて僕は謝る必要がある。

 「また文脈が読めないなぁ」

 はにかんで答える柚木。今はただ、その微笑みを浮かべていてほしい。たとえそれが僕のためのものだったとしても、今はただ笑っていてほしい。文脈が読めなくたって大した問題じゃない。

 
 柚木に抱いたこの感情にどんな名前をつけたらいいのか、見当もつかなかったけれど。

 初めて自分の生き方を、変えてみようと思ったんだ。