口では「周囲の期待に応えているつもりはない」なんて言いながら、きっと彼女は無意識のうちに周りが思う彼女自身を演じているんだ。本当はどこにでもいるような女の子で、ちょっと性格が変わっているだけなのに、周りが押しつける柚木かをりにならなければいけなくて。


 満たされていると思っていた彼女の人生は、実はもう溢れ出してきていて。


 空っぽな僕の人生と、彼女のそれと、どっちがいいとも思えなかった。

 人の生き方に正解なんて、きっと存在しない。僕の生き方だって、誰かの敷いたレールの上を辿っているわけではなくて、自分が決めたように進んでいるだけだ。柚木も彼女なりに考えて、周囲の描く彼女の生き方と自身で決めた彼女の生き方とをリンクさせているんだと思う。

 
 それで均衡を保っているとばかり思っているんだ。