「ひどいなぁ、なんかいつもに増して毒舌に思えるんだけど」

 柚木は眉毛を八の字に曲げてあからさまにしょんぼりとして見せた。その仕草だけはなぜか可愛く見えた。

 「今日は一段と早く帰ってしまいたい気分なんだ。例えば、そうだな。熱っぽいので早退しますだとか、なんでもいい。そんな適当な理由をつけてしまいたいほどに帰ってしまいたいんだ」

 「そりゃまたどうしてさ。人生そのものに気だるげそうな君がそこまでして帰りたいと思う理由があるのが不思議で仕方ないよ」

 そう言いながら、掠れた音のするパックを丁寧に折りたたんだ。小学校の頃の給食でよく出されていたパックの牛乳の折り方みたいだった。

 「知りたいの?」

 「話す気はあるの?」

 さすがというかなんというか、僕のことをよく分かっているなと思った。