なんだか納得しにくい説明だった。というよりは、納得できない説明だった。

 多分、それはもともとの性格からまったく違うからなんだと思った。根本的に言葉や人付き合いの捉え方を、どっちが正しいとも言えないような考え方を、お互いに理解できないものなんだろう。

 「柚木は、不思議な人だね」

 「倉木くんにそれを言われてしまうとは…何たる屈辱」

 いつの間にか口調は元に戻っていた。いや、むしろ本性を隠したと言うほうが正しいのか。ケラケラと笑いながら、通りすがるクラスメイトに挨拶をしている。

 「たとえ面倒だったとしても、一回きりの人生で誰も私のことが印象に残ってなかったら寂しいよ。自分がこの世界からいなくなったときに、悲しんでくれる人がいないのはつらいに決まっている。猫は孤独に生きているように見えて、実はいちばん孤独を嫌って生きているんだよ」

 仮面を剥いだ-多分、彼女の赤裸々に近い-声で柚木はそう言った。僕の視界の半分くらいを占めていた彼女の横顔は、少し俯いていて寂しそうな目をしていた。


 僕は果たして、猫なのだろうか。


 柚木の言葉に反論も思いつかず、一時間目が始まりを告げた。