机の上に積み重ねた日記を紙袋に詰め込みながら、ふと1冊手に取り、ページを開く。

「あ──」

日記に目を落とし、読み始めると止まらなかった。

今まで読んできた日記とは明らかに違う。

大学の正門前のカフェ・モルダウに現れる白いネコとアラン、そして祖母と詩月くんとの繋がりが、淡々と記されていた。

物語か小説のように何十ページものページを割いて描かれていた。

祖母の生きた60余年の生涯で、叶えられなかったアランへの思いと、色褪せない思い出と、アランへの祈りが、切々と綴られていた。

夕暮れの中で聞いた、拙いヴァイオリン演奏と詩月くんが弔問で弾いたヴァイオリン演奏を思い出して、日記を読みながら、何度も頬を拭った。

これは──アランへ向けたラブレターだ。詩月くんに向けた遺書だ

そう思った。