金木犀のエチュード──あなたしか見えない

「あのネコ……祖母が可愛いがっていたネコかもしれません。飼っていたというわけではなく、祖母の演奏を聴きにきていたのかも」

「ん? そうか──あのネコは9月初めから」

「詩月くんのチャイコフスキーは祖母の演奏に似ているんです──詩月くんの立ち居振る舞いが祖母を思い出させるんです」

「ああ、それは俺にも解る。詩月は5才から高校受験までリリィにヴァイオリンを習っていたし、詩月からリリィは作法に厳しいと聞いていたからな」

「えっ!? 周桜くんのチャイコフスキーはそんなに似ているの?」

わたしと岩舘さんの話を聞いていた志津子が身を乗り出して訊ねてきた。

「弔問の日に詩月くんが弾いた『懐かしい土地の思い出』は……涙が止まらなかった」

「そりゃあな~。レッスンのたび毎回、聴かされれば、そっくりな演奏にもなるだろうよ。詩月は気分が乗らないと演奏に出るからな。レッスンよりも街頭演奏の方が気分が乗るんじゃないか」