金木犀のエチュード──あなたしか見えない

詩月くんがお婆ちゃまの御悔やみに来た日の様子は他のお弟子さんよりも寂しそうだった。

お婆ちゃまの遺影に向かってヴァイオリン演奏する後ろ姿も、観ていてこちらが辛くなるほど憂いを帯びていた。

舞台の上、詩月くんの演奏にお婆ちゃまが亡くなった喪失感、癒えない悲しみや寂しさ、お婆ちゃまに伝えられなかった様々な思いも、すべて込められているんだと感じた。

やみがたい哀愁を呼び起こす調べに、観客席からすすり泣きの声が聞こえた。

わたしの隣の席でも志津子がハンカチで目頭を押さえていた。

詩月くんの姿が安坂さんや、詩月くんの前の演奏者よりも大きく見えた。

アランはどんな気持ちで詩月くんの演奏を聴いているんだろう?

お婆ちゃまの思いはアランに届いているだろうか?

「小百合、あなたも涙を拭いたほうがいいわよ」

わたしは耳元で志津子に言われ、頬に手を当てた。