金木犀のエチュード──あなたしか見えない

詩月くんはお婆ちゃまの思いを伝えるために「懐かしい土地の思い出」を弾いているんだと。

お婆ちゃまとアランがコンクール本選ファイナルに2人一緒に進み、「懐かしい土地の思い出」で同曲対決をしたいという、約束ーー叶わなかったリリィとアランの夢。

事故の後遺症で巧く動かなくなったアランの指、ヴァイオリン演奏を諦めてしまったアランをずっと見守りつづけたリリィーーお婆ちゃまの思いを伝えるために。

「コンクールの舞台に上がって、緊張したら知っている顔を探しなさい」

お婆ちゃまはレッスンの時、いつも言っていた。

「詩月がピアノコンクールの舞台でいつも探すのは、だあれ?」

詩月くんがお婆ちゃまに聞かれて答えたのは「リリィ」だった。

リリィーーお婆ちゃま、だけどリリィはお婆ちゃまはもういない。