空泥棒

彼は、顎に手を当てて、少し考えてからこう言った。

「なんか、溶けそうだったから」
「は?…………あ、すいません。」

間髪入れずに聞き返してしまった。
慌てて謝るが、彼はさほど気にしていない模様。
でも本当に意味がわからない。溶けそうってなんだ。わたしはアイスかなにかか。生憎これでも一応人間なんだ。と、心の中で唱える。

「失礼を言ったんならごめん。俺も今何言ってるかわからなかったんだけど。ただ、思ったことを口にしただけで。」

この人は何が言いたいんだろう。知りあって間もないわたしになんでこんなに話しかけてくるんだろう。いや本当に意味がわからない。

「はあ…、とりあえず、あの、すごい失礼なんですけど、どこかいってくれません?」

「なんで」