空泥棒

「なにしてんの?」

声が聞こえた。
この世のものじゃないみたいな、声。

声のした方を向くとそこには、男の子がいた。
私と同じぐらいか、すこし年上の。
でも、同級生とは違う、独特な雰囲気。
わたしは、反射的にカメラを持ってしまっていた。

「…あの、どちらさまでしょうか」

こんなに綺麗な人、私は知らない。
こんなわたしの知り合いに、いるはずがない。

「うん、俺もおまえをしらない。」

彼は当たり前のような顔でそういった。
まるで、「冬は寒いよ」とでもいうように。

「ねぇ、おまえは、いま、なにしてた?」

彼は表情を変えずに尋ねてくる。
わたしは言葉に詰まった。
なにしてた?といわれても。空を見てた、としか言えない。しかしそれではただの変人になってしまう。ていうか、見たらわかるだろ。

「わかった、質問を変える。」

口を紡ぐ私をみて、彼はこういった。

「おまえは、いま、なにを考えてた?」

どうして彼はこんなことを聞くんだろう。
見ず知らずのわたしに。まったく理解できない。

「待ってください、なんで、そんなこと聞くんですか?」

「え?」

聞き返されるとは思ってなかったので、少し戸惑う。

「な…、なんで、そんなこと、きくんですか。」