空泥棒

鞄を自転車のハンドルに掛けて、そこら辺を歩く。
何かいいものが撮れないかなあ。猫とか。
まあそんな都合よく、しかもこんな寒い日に河川敷にはなかなか動物などいないわけで。
かれこれ数十分は歩き回っている。
少し立っているのが疲れた。
空を見上げて、ほう、と息をつく。

わたしは、この世界を彩るものを永遠に残したい。
どんなに綺麗なものもいつかは消えてなくなる。
形あるものは、必ず。
人の絆だって、永遠を誓う約束だって。

ぶんぶんと頭を降って煩悩を消す。
こんな寒い日は嫌い。朦朧として、嫌なことまで思い出してしまうから。たとえば、君のこと。

わたしは、空をみつめた。
少し雲が出ていた。
あの時と、よく似た空だった。

それが合図かのように。