わたしは颯爽とその騒がしい部屋から出た。
ひとりきりなのに騒がしいとは複雑なものだけども。

今日は、終業式だった。

高校1年生のわたしこと、荻野 陽は、近いからという理由で決めた高校でこの1年、ひたすら1人だった。ひたすらだ。

人と関わることが嫌い。

みんな何考えてるかわからないし、人にあわせて行動するのなんて、まっぴらごめんだ。いつからこんなにひねくれた性格になったのかは忘れたということにしておく。記憶の片隅で、縮こまった記憶は、忘れたのと同じ。

とりあえず、無難に、なにも事件を起こさず、毎日が無事に過ぎてくれてほっとしている。
最近では1番の上機嫌のまま、廊下にいた数人の男女に紛れて、少し緩い首のマフラーを巻き直ながら階段を降りていく。

1段1段降りる度に浮くスカートと、長ったらしい髪。

そもそもなんで学校に階段なんてものがあるんだろう。
最近はバリアフリーも大事なんだからエレベーターにしたらいいのに。
なんて馬鹿なことを思いながら玄関へと足を運ばせる。

周りの人には目もくれずに学校の外に出た。
外は意外と寒くて、思わず自分で自分を抱きしめる。

「さっむ……」

朝の方が寒かったが昼までこんなに寒いとは。
冬め。花の女子高生にこんな仕打ちを。

ぎゅっと身を縮めながら駐輪場まで走る。
中学から使っているお気に入りの真っ赤で可愛い自転車に乗り、ガチャン、と後ろのストッパーを足で蹴って一気にペダルをこぐ。