雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


「久しぶり。」

「……久しぶり。」

俺の控えめな声に、数秒おいて返事が返ってくる。声はあまり変わっていないように思えるが、やはり成長とともに少しだけ低くなっているとは思う。

そんなことを思いながらも、どこか俺らの間に気まずさが流れる。

最後に会った小5の夏。別にやましいことをしたわけではないが、これほどまでに会うことを避けられ、会う機会がなかった日々は自然とお互いの間の空白が大きくなっていたのだなと、どこか噛み締めてしまうのだ。

最初の挨拶を終えてから気まずさが継続して、二人の空気を侵食している。親同士が仲がいいのはこういう時に困るものだ。

未だに会話の切れ目が見当たらない。さて、この親同士をどう引き剥がそうかと思ったところで、隣から制服を引っ張られる。

驚いて、引っ張った相手を見れば俺と目を合わせたくないのか俯いたままで、どこかイラっとさせられた。

「桜。なに。」

俺がそう呼べば、ビクッと肩を上げて言いたそうだが言いにくそうに口元をもごもごと動かした。

先ほどと大差ない声の大きさは聞き取るのにとても必死となる。