雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


まだ、朝は早いというのに眩しすぎるというくらいに日差しが強い。春はあまり天気が安定するような季節ではないため、今日が晴れで良かったと心から感謝するくらい。空は青いと心が晴れた。

おろしたてのローファーは、まだ慣れていないため歩くコツが少しだけ遅れるが、慣れてしまえばそうでもなかった。

高校は電車通。それは入学式であるこの日だって例外ではない。親ふたりを連れて乗り込む電車は、人があまりいないがどこかくすぐったく感じた。

俺は反抗期があったわけじゃない。しかし、こんなに愛情を注がれて育ってしまったら逆に親のことを尊敬してしまうことはある。

穏やかな家庭で、どこの家からも羨ましがられるくらいには、家族で仲良しだ。俺は、それが嫌いじゃないしできれば一生それで通していきたい具合には落ち着いている。

しかし、高校にもなって気合の入った親を連れ歩くというのはどこか気恥ずかしさを覚えてしまうのは致し方ないことだと思う。

そんな気恥ずかしさを背負ったまま電車を降りるのは10分ほど、車内で揺られたあとだ。