雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに



俺の住んでいる地区でも一番の進学校と言われている公立高校に入学することとなった。

新しい制服は学ランで、中学も学ランだったためあまり変わり映えしないものだと、肩を少しだけ落とす。

ただ、心機一転するのはこの新品さだろう。3年間使用したよれよれの学ランとはやはり違うものを感じたし、校章の入ったボタンも金色に輝いていて、俺もこれから高校生なのだと心を躍らせる。

すでに入学式の準備を済ませてはいつでも出られる言わんばかりにそわそわしている母親と、息子の晴れ姿ということで昨日から入念に忘れ物がないかをチェックしている父親を見ていると、自分よりも数倍楽しみで仕方ないのだなとどこか呆れ気味になる。

高校入学と同時に買ってもらったスマートフォンを、新品のスクール鞄にしまえば、おろしたての真っ黒いローファーを履く。

「忘れ物はない?」

「ない。」

「上履きはもったか?」

「持った。」

「筆箱は?」

「ある。」

「携帯…」

「あるっ!!しつこい。」

両親の忘れ物チェック攻撃に半分乱暴に返せば二人よりも早く家を出た。