俺は言われた通りのものをひととおり買ってしまえば、相変わらず松井に合わせてふらふらと雑貨屋に入った。そこで、買おうかと思っていた本の栞を買って外を出ようとしたとき、ふと目に止まったモノに手を伸ばす。
値段からしたら全然安物だ。だが、デザインがとても気に入ってしまった。桜の花びらを模様したチャームにピンク色の小さな石が付いているネックレスに小さく笑みを浮かべては、それを持って再びレジへと向かう。
先に外に出ていた松井に、遅くなったことに侘びをして事情を話せば、少しだけ不機嫌だった彼女も息を吐いて仕方ないと笑った。
そこからもまた何件か回った時に、今日のお礼に松井の分にひとつ、可愛い入れ物に入ったキャンディーを買っては、歩き疲れた俺らは喫茶店に入ることになった。
お互いに飲み物と甘いものを頼めば疲れを癒すように背もたれに体を預けて大きく息を吐いた。
「にしても、今日は本当に悪いな。休みの日に付き合ってもらって。お陰で桜にプレゼンとを用意することできたよ。」
無料サービスの水をあおりながら、肘をついて笑みを向けると、松井も笑みを返しながら首を振った。
「いいよ。私も桜にプレゼント買えたし。柳瀬くんと買うことによって被ることないしね。気晴らしにもなって一石二鳥ってことで。」
どこか大人びた風の姿に本当に同い年だろうかと思いながら舌を巻く勢いだった。
「ああ、そういえば。これ、松井に。」
そう言って松井に先程買った小洒落た瓶に入ったキャンディーを相手に渡した。壊れないように箱に入っているために、中はわからなかったが、モノをもらって嬉しいのかどこか嬉しそうに頬を緩ませている。
「え、私に?ありがとう。」
そう言って受け取っては、中身が気になるのか横から上から覗き込んでいる。気にせず開けていいと言ったら素直に包を開けだした。
