雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


靴を履き変えたところで、向こうから走ってやってくるちっこいのが見える。

ふたつに編んである三つ編みをはねさせながら、きていの長さのスカートを翻しながら。

手を振ってやってきてはそいつがここについて、疲れたように息切れをしていた。

「ご、ごめん。まった…?」

「そんな走ってこなくても俺はここにいるのに。」

息切れする相手にハンカチを渡して、俺はロッカーのある校舎ととなりの校舎の間にある自販機の方に足を向ける。カバンは、ロッカーの方に置いてあるため、戻る意思だけは示して。

自販機で桜の好きであろうりんごジュースを買って戻ってくれば、桜は少しだけ落ち着いたのか借りたハンカチで汗をぬぐっていた。その際にメガネを外しているため、その行為が妙に色っぽく見えたのは下心が少し働いたからだと思われる。

少しだけ早い動悸を無理やり笑顔に押し込めては、桜に近づく。

「はい。」

そう言ってりんごジュースを渡せば、桜は目を点にして俺を見た。

「桜、いつもこれ買ってるじゃん。嫌だったら捨てていいし。」

半ば強引に桜の手に握らせては、おいていたカバンを手に取り肩にかける。

未だに手に持っているものをじっと見て固まる桜に、早くしないとおいてくぞと半ば脅しに似た冗談を投げては、出口の方で待つことにした。

半分かっこいいような事を言っては恥ずかしく感じているなんて格好がつかないからだ。

ばたばたとロッカーで靴を履き替えている桜を端に俺は、少しだけ優越感に浸るように空を見上げた。