雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


「なるほど、あの楽器か。そうか、部活入るなら帰り遅くなるんだな。俺、待っておこうか?」

「へ…?」

「ほら、下手すると暗くなったり黄昏時ってあまり女の子一人で出歩くと危険だしさ。帰る方面ほとんど一緒なんだしいいじゃん。」

何よりも、伯母さんと透さんに桜をよろしくね、と言われている手前あまり一人で帰ってもらっては困る。その上に、身内の俺が控え目に言っても桜は可愛い。普段、顔より少し大きめの眼鏡で隠れているが外すとそこら辺の女子には負けないだろう。

何よりも、ひとりで帰らせた挙句にそういうことが起きたら、今まで無関心だった俺でさえも気が気でないし心配するものだ。

そういう言い訳を脳内で再生させていると隣を歩いていた桜が小さく口を開いた。

「ありがとう…。」

ほんのりと頬を染めては笑むその姿にどうやら了承が得られたらしい。俺も、つられるように口角をあげれば相手の頭を、ぽんぽんと撫でた。

「部活動体験って今日からだろ?多分帰る頃には図書室は閉まってるだろうし、教室にいるから終わったら呼んで。」

その言葉に大きく頷くのを目の端で捉えれば再び自然と笑みがこぼれる。