「大丈夫、なんでもないから前向いていろ。」

そう小さな声で返しては、こちらに顔を向けていた桜の鼻先を軽くつつく。すると、小さな声でわかったと返して、俯きながら正面に顔を戻す。

なにかやらかしてしまったか、と内心焦りながら俺も先生の方に顔を移す。

今日は入学式ということであまり長いHRはしなかった。委員決めや役割決めなどは明日決めると言っていた。

最後の締めに、先生が学級委員長がいないので代わりに号令をかける。すると、クラスにいた生徒全員は立ち上がり礼ををした。

俺の高校生活がここからゆっくりとカウントダウンを刻み始めたことが、どこか遠くで聞こえたような気がした。