雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


この高校は敷地がとても広いというのはここに来るまでにも思っていた。色々と校舎の中を確認しながら職員室についたのはあれから10分後だった。

入学式にはまだ時間はかかるが、新入生の待機は始まる頃だろう。

そんなことを頭で思いながら職員室の扉を思い切り開いた。

「こんにちは。柳瀬です。新入生代表の挨拶担当できました。」

そう、堂々と言えば、奥から一人の先生がやってきた。まだ若い女性の先生だ。雰囲気は柔らかそうで優しそうだなというのが第一印象。

「えぇーっと、柳瀬…桜…さん?ごめんなさい。私、てっきり柳瀬さんは女の子かと。」

俺を見ては戸惑っている。きっとまだ慣れていないんだろうな、とどこか微笑ましく思いながら俺は、後ろに隠れている張本人の背中をそっと押しながら前に出す。

「俺は柳瀬雪です。桜はこっちのちっこい方で、女の子だというのはあっていますよ。」

俺に押されて先生の前に出ればぺこりと深くお辞儀をする。

「あ、あら。あなたが柳瀬桜さんね。お待ちしていましたよ。」

そう言って桜の背中を優しく押しながら、職員室へと招いていた。

俺はそれを見送れば踵を返してその場をそっと去った。