雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


「ところでさ…」

そんな嬉しい中学時代からの旧友との再会の名残を残したまま切り出したのは澤田だった。

「ん?なに。」

相手に顔を向ければ、澤田はずっと気になっていたと言わんばかりに質問を投げてきた。

「その、お前の影に隠れているちっこいの誰?」

そしてここで思い出すのだ。桜の存在を。

あっ、と思い出したような表情を浮かべては、俺の後ろに隠れて澤田を見上げている桜。どうみても小動物だ。妙に愛らしさを感じてしまう。

「なに。お前もしかして、あんなに中学時代彼女を作りたがらなかったのはこういうことか?!」

「違う!!!こいつは、柳瀬桜。俺の従姉妹だ。」

彼女を作りたがらなかったのは事実だが、澤田だって同じじゃないかと付け足してはため息をつく。そして、ぽんぽんと優しく桜の頭を撫でては、俺の後ろでぴょこりと頭を下げた。どうやら、俺の影から出てくる気はないらしい上に人見知りが激しいらしい。

そのことを瞬時に理解したのか、澤田は桜の背丈にあわせて少しだけ屈んだ。俺の背後に手を伸ばしては俺の真似をするように桜の頭を撫でる。

「俺、澤田健人って言うんだ。雪とは中学時代からの友達でさ。結構付き合い長いんだ。」

そう言って桜にいつもの爽やかな笑顔を向ける。これで女子はイチコロなんだよなと、心の中で呟きながら、こういうのを素でやっているのだから大したものだと感心した。