雪の音は静かに降り注ぐ桜とともに


さっさと親のもとに帰ろうと歩みをはじめようとした時だった。

ドンっと背中に強い衝撃をくらい一瞬だけ前のめりになる。

「いってぇ…」

なんだと振り返ればそこには見覚えのある顔。

「よっ。雪!!お前相変わらずすげーな、1組って。俺5組だったわ。」

「澤田!!」

同じ中学で、一番付き合いの長い澤田健人だった。運動部だった澤田は変わらずガタイのいい筋肉質の体に、少しだけ麻色の肌は健康的だ。

「って、お前いま背中になにしたんだよ。」

「何も?ただ思い切り叩いただけ。」

「どおりで、痛いわけだ!!お前もうちょっと力加減考えろよ。」

まったくもうとため息をついては、未だにひりひりする背中を後ろ手にさする。

当の澤田本人は爽やかに悪いと合掌をする。どうも俺はこの笑顔に弱いのかため息をついて大丈夫だと言う。相変わらずイケメンだよな、こいつと心で呟きながら、こいつのこういう性格に勝てないというのは中学3年間を通して理解していた。

きっと高校3年間も変わらずこうなのだろうと思いながら、澤田が変わらずいることにどこか嬉しさが沸いたのは本人には内緒だ。