コンコン

「はーい。誰?」
一「俺だ。」
「あぁ。一ちゃん。どうしたの?」
一「歳が慌てて出ていったから気になってつけてきた。」
「そう、だったんだ。それで?」
一「お前、歳のことが好きなんだろ?」
「好きじゃないよ。」
一「嘘をついても無駄だ。何年一緒にいると思ってんだ。」
「あはは。やっぱり一ちゃんには嘘つけないね。」
一「全部、話してみろ。」
「一ちゃん。一ちゃんが言ったとおり、私は歳兄のことが好き。ずっと前から。」
一「あぁ。」
「…好きだから。好きだからこそ、幸せになって欲しいの。麻侑は、凄く優しくて、家事もできる。仕事ばっかりしてる歳兄にはそうやって支えてくれる人の方がいいの。それに、『バケモノ』の私なんかと結婚してもいいことなんてないよ。」
一「椿鬼。お前は自分に自信を持て。お前は『バケモノ』なんかじゃないんだ。」
「一ちゃん。ありがとう。でも、もう決めたから。」
一「…そうか。なら、俺はもう何も言わない。」
「ありがとう。」
一「また来るから。あんまり無理するなよ。」
「うん。またね。」