もう二度と昇らない太陽を探す向日葵


 その時、私に初めての涙を見せた彼。そして、私は、ひとつの大きな壁を目の前に、二人でその壁を乗り越えていくことを決めた。

 しかし、その決意から一年も経たないうちに、彼の決意は揺らいでしまった。

 大学三回生になって間もない頃、入院をした彼。そんな彼の元に、大学を休み、彼に嘘を吐いてまで通い続けた私。そして、その嘘に気づきながら私といる時間を過ごしていた彼は、いつも申し訳なさを感じていた。

 そりゃあ、そうだ。私が彼の立場でも、絶対に申し訳なく思ったはずだ。その罪悪感のようなものに、いつも、胸をキツく縛られていたはずだ。

 だけど、それでも彼は、私の隣にいる時だけは笑い続けてくれたんだ。そう、未来の私は、本に記していた。

 きっと、私には想像もできないくらいに苦しかっただろう。つらくて、どうしようもなかっただろう。

「苦しかったよね」

 私が、そう呟く。すると、お兄さんは私の髪を優しく撫でた。

「そんな顔しないで。これは、夏帆のせいじゃない。本に書いてあった手紙、読んでくれたと思うけど、これは俺が弱かったせいだから」

「でも……」

「夏帆が隣にいたから乗り越えられたこと、救われたこと。たくさんあった。それは、あの手紙には書き納められないくらいたくさん。本当に、俺は夏帆に救われたんだよ。夏帆がいたから、また、笑うことができたんだ」