もう二度と昇らない太陽を探す向日葵



「成美ちゃん」

 駅前で私を待っている成美ちゃんを見つけ、私は右手を挙げた。すると、そんな私に気づいた成美ちゃんは口角を上げて私と同じように右手を挙げると「やっほう」と言って笑った。

「ごめんね、わざわざここまで来てもらっちゃって」

 成美ちゃんの側に駆け寄った私に、彼女は眉を八の字にして謝った。

「ううん、全然大丈夫だよ」

「ありがと。あ、これ、この間言ってたやつね。本当にすごい面白いから」

「やった、楽しみ。これ、絶対に夏休み中に読むね」

 私は、軽く10冊程度は漫画が入っている茶色い紙袋を成美ちゃんから受け取った。

「うん。それじゃあ私、そろそろ行くね。夏帆、気をつけて帰ってね」

「うん。こちらこそありがとう。塾、頑張ってきてね」

 紙袋を右手から左手に持ち替えると、私は右手を顔の高さまで挙げた。私に背を向けて歩き出した成美ちゃんの姿が小さくなるまで見送ったあと、私も成美ちゃんに背を向けて歩き出した。

 帰宅ラッシュなのか、やはりたくさんの人たちが行き交っている駅前の大通り。私は、その人混みを頑張って避けながら歩いていた。

 人に当たらないようにと、手にぶら下げていた紙袋を持ち上げて胸の前に両手で抱えた。そして、必死に人混みの中を歩き続ける。

 人を避けることに必死で思ったように進まない人混みの中、私は、あの本を見つけた場所辺りでピタリと足を止めた。