「いいよいいよ。私、塾のついでに持っていくから」
「成美ちゃんの塾と私の家、反対方向じゃん!」
私がすかさずそう言うと、成美ちゃんは受話器の向こうで「あはは、ばれちゃった」と言って笑った。
サバサバとした性格で、どちらかと言えば男っぽい性格の成美ちゃん。彼女は、もちろん男子にも人気だけれど、特に女子からの支持や人気は絶大だった。
今も、私の事を気遣って塾のついでだと言ってくれた。こういうところが人気の秘密なんだと思う。しかし、これから塾があるのに、塾とは反対側にある私の家まで来てもらうわけにはいかない。
「私、駅辺りまで行くね」
「ごめんね、夏帆。逆に気遣わせちゃって。助かる」
「ううん、私ちょうど暇してたんだ。それに、私が貸してもらうのにここまで持ってきてもらうわけにはいかないから」
私と成美ちゃんは、成美ちゃんが塾に行く前、17時半頃に最寄駅の前で集合することになった。
薄茶色のショートボブの髪を、クシで綺麗にとかし、服を着替える。そうしているうちに、待ち合わせ時刻まで10分を切っていた。
私は、少し慌てて家を出ると足早に駅へと歩き出した。

