もう二度と昇らない太陽を探す向日葵


 最初の2ページ分を読み終えた私は、しおりを挟むことなく両手で本を閉じた。続きは読みたかったけれど、今日は夏休みの課題を少しでも進めておこうと決めていたことを思い出し、それだけはとりあえず先にやってしまおうと思ったからだ。

 閉じた本をベッドの枕元に置いた私は、小さな折りたたみ式のテーブルの上に勉強用具を置き、課題を進め始めた。


 プルルルル。プルルルル。

 30分程課題ノートと向かい合い、今日はここまで終わらせようと決めていた範囲がちょうど終わった頃、固定電話の音が家中に鳴り響いた。

 私は、課題ノートを閉じて立ち上がると、子機を手に取り耳元に当てた。

「もしもし。宮崎(ミヤザキ)です」

 私がそう言うと、子機の向こう側から「あ、夏帆? やっほう、成美(ナルミ)だよ」と呑気な声が聞こえてきた。

「成美ちゃん、どうしたの?」

「この間言ってた漫画、お姉ちゃんから返って来たんだよね。だから、これから持って行こうかなと思って」

「あ、本当? ありがとう!漫画、私が取りに行くよ」

 夏休みに入る前、私は同じクラスの成美ちゃんに漫画を貸してもらう約束をしていた。随分前に成美ちゃんに少女漫画を借りて以降、どっぷりとその世界にハマってしまった私は、今では小説と同じくらい少女漫画も読むようになっていた。私の中で、少女漫画はブームを引き起こしていたのだ。