もう二度と昇らない太陽を探す向日葵


 彼がいなくなってしまってからの私は、まさに抜け殻状態だった。何をする気も起こらない。いや、違う。何をしたらいいかが分からなかった。私は、彼のいない世界での過ごし方を忘れてしまっていた。

 毎日を、途方に暮れたようにただただ息をして生きているだけ。何をする訳でも何を考える訳でもなく、ただただぼうっと眩しい太陽を部屋の中から眺めていた。

 ある日、そんな私のもとへ彼の母親が訪ねてきた。

 数日間、食べ物を口に運ぶことさえもしなかった私の体は簡単に痩せていった。もともと太っていたという訳でもなかったが、腕も、足の膝辺りも、骨が浮き出るようだった。そんな私を見た彼の母は、まるで痛々しいものを見るかのように苦しい表情でぎゅっと目を閉じた。

 彼の母は、彼が消えてしまった次の日に病院で会った時よりも随分回復しているように見えた。それは、心身共に。少しだけ以前と同じような柔らかな表情に戻った彼の母を見て、良かったと安心する反面、私はどうしてそんなに普通にいられるのか不思議で仕方がなかった。

 だって、この人は母親なんだ。彼を産んだ人だ。私よりもずっと長い時間を彼と過ごしたはずの母親が、どうしてこんなに普通に戻る事ができたんだ。

 単純に不思議に思う感情が、段々と怒りに変わりつつあった。

 この人は、彼を忘れるのか。彼を失った痛みを忘れるのか。彼の存在をなかった事にするのか。そんな風に思ってしまった私は、また、あの日のように彼の母の両肩を掴んでしまった。