「真っ直ぐ太陽のある方だけを見つめてる。健気で、素直で、可愛いなって思わない?」

 好きだなあ、とお兄さんが呟く。

 私は、ふと、お兄さんが未来の私に向けて言った〝向日葵みたいな女の子だった〟という言葉を思い出した。

 きっとお兄さんはそんなつもりはないのかもしれない。だけど、私はお兄さんの言葉に、ぎゅっと胸が締め付けられるくらい幸せな気持ちになった。

「お兄さん」

「ん?」

「連れてきてくれて、ありがとう」

 お兄さんは、私の一言に一瞬目を丸くした後で「どういたしまして」と言って笑った。

 隣で、私よりも背の高いお兄さんが笑っている。きゅっと口角を上げて、目を細めているお兄さんを見ていると胸が苦しい。苦しいくらい幸せになるなんて、こんな気持ち、初めてだった。

 ああ、私、もうお兄さんの事を好きになってしまってる。

 そう思うと、思った瞬間に、堪らない愛しさのようなものが込み上げてきた。これでもかというほどに込み上げる特別な感情に、私は酷く戸惑った。だけど、それ以上に幸せだった。


「夏帆、あっちも見てみよう」

「あ、ちょっと待って!」

「ほら、早く早く」

 無邪気に私の前を走り、少し先で立ち止まって振り返る。振り返ると、とても優しい笑顔で私を待っていてくれる。

 後ろから太陽の日差しが射していて、キラキラと輝いているように見える彼は、私にとって、まだ出会って間もない人。謎の多い人。知らないことの方が多い人。

 そのはずなのに、私はもう、こんなにも彼が愛おしい───。