鏡の前で、まるで睨めっこでもするかのように悩み続けた。そうして決まった、白い膝丈のスカートにギンガムチェックのシャツ。そして、カンカン帽子というスタイル。

 少しでも、お兄さんに可愛いと思われたくて、何十分も悩みながら選んだのに。それなのに、こんな風に言われたくはなかった。

 そう思うと、悔しくて段々と態度に出てきてしまう私。あからさまに怒っていると態度で示してしまっていた私に、お兄さんは眉を八の字に下げながら笑った。

「ごめん。今の言い方は良くなかった。ねえ、夏帆。俺なんかのためにこうやって可愛くしてきてくれて、ありがとう」

 言い訳みたいだけど、さっきのは全然そういうつもりじゃないんだ。

 そう付け足して、私を宥めてくれるお兄さん。私は、そんなお兄さんの優しさや言葉で簡単に機嫌を直してしまう。

「いいよ。許してあげる」

 私を見て、お兄さんは「良かった、行こう」と言って笑った。心底安心したような笑顔に、私まで自然と笑ってしまった。


 私達二人は、またしばらく歩きつづけた。他愛もない話をしながら歩き続けると、私達は、ようやく求めていた景色を目にした。

「わあ、綺麗」

「でしょ」

 一面に広がる向日葵の黄色。そして、その上に平行して広がっている青空。眩しい光を放つ太陽を見上げている向日葵たちに、私は釘付けだった。


「可愛いよね。向日葵って」

「可愛い?」

 目の前に広がっている景色から目を離せないでいた私に、隣から飛んできた優しい声。向日葵のことを「綺麗」でも何でもなく「可愛い」と意外な表現をしたのが何だか意外で私は目を丸くした。