「そうなんだ。私も甘いもの大好き」

 一緒だね、と笑うとお兄さんも笑って頷いた。

 その後、私はお兄さんを知るため、たくさんの話をした。血液型や身長、嫌いな食べ物や好きな場所なんかも聞いた。

 知りたいことが多すぎて、気がつけばカフェの閉店時間も過ぎ、空は青と橙色が混ざりあっていた。


「そろそろ帰ろうか」

 お兄さんがそう言って立ち上がった。私はお兄さんに続いて立ち上がると、二人隣同士に並んで歩き始めた。


「あ、私、一人でも大丈夫……」

「大丈夫とか、そういう問題じゃない。黙って送られなさい」

 隣を歩き続けるお兄さんが、私の頭にこつんと拳を置いた。

「……ありがとうございます」

 小さく呟くようにお礼を言った私は、隣にいる、頭二つぶんくらいは高い位置にあるお兄さんの横顔を見つめた。

 白くて、どちらかといえば薄い淡白な顔。華奢で、少し弱そうな印象すら与える彼の体。だけど、すぐ隣にある腕は、意外と太くて男の人なんだという感じがする。


 これからこの人の事を好きになるんだ。そう思うと、何故だか胸が騒いだ。

 正直、もう既に惹かれ始めていた。だけど、この先、彼が私にとって、もっと特別で、大事な人になる。


 私は、少しだけ先の未来にどきどき胸を高鳴らせていた。

 もっと、お兄さんを知りたいし、知ることができる。一緒にいたいし、一緒にいることができる。

 本の内容と同じように、彼と同じ時間をこれから過ごせるのかと思うと、嬉しくてたまらなくて、私の胸は、いつもよらもテンポ良く脈を刻んでいた。