この、私の未来が記された本をどうしてあのお兄さんが持っていたのか。その真相を探るため、私は家を出るとお兄さんの元へ向かった。
白いTシャツに黄色の短パンというラフな格好で外に出た私は、急いで駅前へと向かった。あの、いつものカフェの近くまでやってくるとテラス席に腰をかけているお兄さんが見えた。
私の視線に気づいたのか、お兄さんは私の方を見ると、少しだけ口角を上げた。
「おはよう。来ると思ったよ」
お兄さんの座っている席まで、少しだけ足早に歩く。すると、お兄さんはいつもと変わらず笑ってそう言った。
少し意味深なお兄さんの言葉に何と返せばいいのかと考えながら、お兄さんの向かい側の席に腰をかけた。その時、ふと何も乗っていないテーブルを見て不思議に思った。
「あれ、何も頼まなかったんですか?」
テーブルにも、お兄さんの手元にも、何も飲食物はない。何かを食べるわけでも飲むわけでもなく、お兄さんはただそこに座っているだけだった。
「お金が無いので、何も頼めなくて困っています」
眉を八の字に下げて、しょぼくれたような表情をしてみせたお兄さん。
私は、そんなお兄さんの表情と、聞き慣れない敬語が面白くて、自然と口角を上げて笑った。
「そうだ。お兄さん、ホームレスだもんね。分かりました。仕方がないので、私がお兄さんの分も買ってきてあげましょう!お兄さん、何がいい?」

