私は、開いていた本を両手で閉じた。

 どくん、どくん、と胸が高鳴る。それは、何か恐怖にも近いような心地の悪い鼓動。

 私は、この作品を読み進めるごとにだんだんと大きくなる違和感のようなものを感じていた。その得体の知れない何かに、恐怖に似た感情を覚えた私は、閉じた本をスクールバッグへと突っ込んだ。そして、部屋着から制服に着替えると小走りで家を出た。

 今日は、部活も他の予定も何もなかった。私はただ、暇つぶしに読もうかな、なんて軽い気持ちで、駅前で見つけた本を開き、続きを読み始めてしまった。

 読み進めていくと、不思議なことに、この本の内容と私に一致する部分がいくつかあった。

 私が、向日葵柄のハンカチを持っていること。そして、そのハンカチをお気に入りとしていること。クラスが1組であることから、美術部に入っていることや家庭事情まで、全て一致している。

 作中に出てくる男の子。その印象というのも、何だかあのお兄さんに似ているような気さえした。

 何が何だかよく分からない。ひょっとしたらただの偶然なのかもしれないけれど、偶然にしては私と一致しすぎている気がしてならない。少し、気味が悪いくらいだ。

 家から出た私は、ある事を確かめる為に学校へと向かった。

 暑い日差しの中を早歩きで進み、玄関で乱暴に靴を脱ぎ捨てた私は職員室の前へと向かった。