他の部員よりも早くテーマを決めた私は、誰よりも先に筆を握った。作品が描き終わった時点で夏休みの部活は各自自由参加になるという美術部伝統のルールのため、みんな必死で作品を描き終わらせようとしているのだ。
私はそれを見越して、テーマは既に去年の夏には決めていた。来年は私の好きな向日葵を描く、と。
「ああ、俺も早く書き終わらせないと」
「あはは、そうだね。頑張って」
基本的に面倒くさがりの志之は、本当は帰宅部希望だったらしい。しかし、担任の先生に部活に入りなさいと言われ続け、一番楽そうな美術部に入ってきたと彼は部活に入った当初言っていた。
だけど、彼の絵はとても綺麗だ。繊細で、でも、とても迫力がある。そんな絵を、彼は描くことができる。
去年のこの時期に、彼は「ああ、完全に部活選び間違えたわ。楽そうだと思って入ったのに」と言ったけれど、私は、彼がこの美術部に入部したのは間違いなんかではなかったと思う。
彼が、今年はどんな絵をコンクールに出すのか。そして、それを見た私は何を感じるのか。そんな事を考えてわくわくしながら、私はまた筆を手に取り、青い空が塗られた画用紙と真っ直ぐ向き合った。

