「夏帆、コンクールに出す作品それにすんの?」

 翌日。私は、通っている高校の美術室でコンクールに出す作品を描き進めていた。青色の水彩絵の具をつけた筆を片手に、真剣に画用紙と向かい合っている。そんな私に、突然後ろから声がかかった。

「うん。そのつもりだよ」

 後ろから私へ声をかけてきた赤みがかかった茶色い髪が特徴的な彼は、隣のクラスの2組で、同じく美術部の萩谷志之(ハギタニシノ)。

 明るくて人懐っこい性格の志之と、人と話すことが好きな私は、去年、美術部に入って間もなく仲良くなった。私達は、今では何でも話せるような仲になりつつあった。

「へえ、向日葵か。いいじゃん」

 私の後ろの席から隣の席へと移動してきた志之が、絵を見て笑顔を浮かべた。

「ありがとう。去年から、今年は向日葵の絵にするって決めてたんだ。志之は? 作品のテーマ決めた?」

 この時期、私の住むこの町では毎年美術や書道のコンクールが行われる。同じ市内に住む高校生なら誰でも参加できるそのコンクールに、この学校の美術部は毎年参加している。

 各自テーマや作品名を決めて参加するのだけれど、今年の私のテーマは、太陽を見つめる向日葵。綺麗に咲いて太陽を見つめている向日葵と、綺麗な青空、そして、ジリジリと向日葵を照らす太陽を描こうと思っている。

「うん、まあね。描き始めてるけど、俺、多分夏休みギリギリまで掛かりそうだわ」

「え、本当? 私は、来週辺りで終わらせられるかなって思ってるよ」