もう二度と昇らない太陽を探す向日葵


「もう二度昇らない太陽を探す向日葵。これは、未来を知っている夏帆が書いた絵だったんだね」

「うん」

「そっか。そっか」

 何度も優しく表紙の絵を撫でたお兄さんが、その手を止めて顔を上にあげた。

 そのお兄さんにつられるようにして私も顔を上げる。すると、空はもうオレンジ色がかっていた。

「今日が、終わっちゃうね」

 綺麗なオレンジ色と濃い紺色が混じる空と夕陽。それをぼんやりと眺めながら私は呟くように言った。

 この夕陽が、もう今日は終わりに差し掛かっているんだと知らせている。

「そんな寂しそうな顔しないでよ。今日が終わるのは、明日が始まるから。明日、もう一度出会うため。でしょ?」

 お兄さんが、少し俯く私の顔を覗き込んだ。

 ああ、本当にすごいなあ。

 私は、お兄さんにうまく転がされているような気がしてしまうくらい、単純に、簡単に、気持ちを動かされた。

 彼にもらう言葉に、表情に、温かさに、私は一体どれだけ助けられているんだろう。そして、明日からの私も、どれだけ助けられ、たくさんのものをもらってていくんだろう。

 これから先、どれだけ苦しくて、どれだけつらくて、どれだけ痛い思いをするのか。

 想像できないほどに苦しい思いをするであろう現実が待っている未来。今、この世界を生きる私がそこへ向かっていけるのは、間違いなくこの人に出会ったからだ。

 きっと、未来の私も、この人となら大丈夫だと。そう思えたのだろう。

 苦しくても、つらくても、痛くても。それ以上の〝幸せ〟がそこにあるから、今の私も進んでいけるのだろう。