「笑い事じゃないよ。私だって、この性格のままでいいのかって本気で悩んだんだからね」
もう、と言って私はわざとらしく頬に空気を詰めた。ぷくっと膨れ上がる私の左頬を、お兄さんは人差し指でぷすりとさす。すると、私の頬にためられていた空気は口から一気に出て行った。
「夏帆は、そのままでいいよ。そのままでいて欲しい」
優しい言葉。優しい声。私は、そのままでいて欲しいというお兄さんの言葉が嬉しかった。
「確かに、思ったことを素直に伝えることでそうやって問題も起きるかもしれない。だけど、素直でいられることって難しいことだと思うし、夏帆の素直でまっすぐなところはひとつの素敵な魅力だと思う。少なくとも、俺は夏帆のそういうところが好きだから。だから、ずっとそのままでいて欲しいと思ってるよ」
「……うん」
私は、自分で思っているよりも単純だ。お兄さんの一言で、未だに少し気にしていた昔の出来事をキッカケとした私の性格についての悩み。それが、一気に吹き飛んでしまったような気がした。
「明日出会う俺に、その真っ直ぐな夏帆を見せてあげて」
「……うん。分かった」
「うん。いい子」
彼の指先が、また私の髪に触れた。

