ありがとう、と言ったお兄さんが優しく笑ってくれた。それだけで、私はとても幸せだった。
「ねえ、夏帆」
「なに?」
「夏帆は、どんな子だった? 今は、どんな風にして過ごしてる?」
興味深そうに、お兄さんが私の顔を覗き込んだ。まるで、好奇心旺盛な子供のような顔をして笑うお兄さんに、私の心は温かくなった。
「うーん、今も未来も変わらないかもしれない。思ったことを率直に言っちゃう性格なんだ。ずっと」
「やっぱり変わらないんだ」
「うん。でもね、そのせいで昔、大変なことになったことがあったの。友達がね、他の友達から貰ったアクセサリーを『これどう?』って言って見せてくれたことがあったの。だけど、私はあんまり好きじゃなくて、ついつい『私はあんまり好きじゃないかな』なんて思ったまま答えちゃって。それで、その子も、そのアクセサリーをあげた友達も同時に泣かせちゃったんだ」
友達から貰ったアクセサリーとは知らず、つい、本当に思ったことを答えてしまった私。本当にあの時は、私のこの性格をどうにかしなければと本気で悩んだりもした。
「ははは、それは大事件だ。まさか、夏帆の真っ直ぐな性格が二人の女の子を泣かせるとは」
お兄さんは隣で大きな口を開けて笑った。ケラケラとお腹を抱えて笑うお兄さんの肩を、私は両手で力強く押した。

